ステンドグラスの歴史
現存する世界で最も古いステンドグラスは、9世紀にドイツのロルシュ修道院跡から発掘された、キリストの頭部と見られているガラス片です。
フランスの文献によると5世紀には既にステンドグラスが作られていたとされています。
古来ステンドグラスは、聖書の物語をガラス絵にして教会の窓枠に取り付け、文字の読めない人々にキリストの教えを伝える目的でつくられたそうです。
日本にステンドグラスが初めて入ってきたのは、1865年フランスの修道院から長崎の大浦天主堂に寄贈された「十字架のキリスト」だと言われています。
日本での歴史は百数十年と浅く、ヨーロッパの宗教にまつわるステンドグラスとは異なり、美しい装飾品としてつくられ、公共の建物や個人宅へ設置されました。
これからも変わることなく、透過した光の美しさを楽しむというステンドグラス本来の魅力は引き継がれ、自然光や人工光による光の芸術作品として進化し続けることでしょう。
ステンドグラスの技法について
ステンドグラスの技法には大きく分けて2種類あります。建築物に取り付けるパネルで主に使われる技法がケイム方式。ランプなど、細かな装飾の技法として使われるティファニー方式。
ケイム方式とは
ケイムとは断面が「エ」や「コ」の字のような形をした鉛線のことです。この鉛線の溝にガラスをはめ込み、半田付けで溶接、ガラスと鉛線の隙間にパテを詰めて仕上げます。窓やドアなどの大型で平面のステンドグラスはこの技法でつくられています。
出典元:ドロ製作室(九州学院中学校校舎へ設置)
太さの異なるケイムを使用することで、線に強弱を付け、銅製のワイヤーを用いて部分的に装飾を加えたステンドグラスパネル。
ティファニー方式とは(ティファニーランプ)
ティファニー方式とは、ティファニー社の経営者であるチャールズ・L・ティファニーの息子ルイス・カムフォート・ティファニーが考案した技法。
若いころ、印象派の画家として活躍していたティファニーは、ガラス片に銅のテープ(カッパーテープ)を巻き、ガラスとガラスをハンダ付けでつなげる技法を生み出し、絵のように繊細で彫刻のように立体感のある作品を作り上げました。
当時発明されたばかりの電気スタンドの傘を美しく彩るステンドグラスを制作し、それが「ティファニー・ランプ」と呼ばれ、今でも世界中で愛され続けています。
あのスティーブ・ジョブズも愛用していたと言われています。
有名建築とステンドグラス
ル・コルビジェのロンシャン礼拝堂
ル・コルビジェ(Le Corbusier 1887 – 1965)のロンシャン礼拝堂。彫刻的な曲面と打ちっ放しのコンクリート、厚みのある白い壁には無数の窓があり、そこに原色のステンドグラスがはめ込まれています。室内は木漏れ日と色ガラスの反射が織りなす神秘的な空間。
アントニ・ガウディのカサ・バトリョ
アントニ・ガウディ(Antoni Plàcid Guillem Gaudí i Cornet 1852 – 1926)バルセロナ世界遺産の「カサ・バトリョ」特徴的な窓の上部には、円形のガラスプレート「ロンデル」を組み込んだ特徴的なステンドグラス。
サグラダ・ファミリア(聖家族教会)
フランク・ロイド・ライト
フランク・ロイド・ライトは長年にわたりガラスに取り組み、研究し、実験し、讃え、ふんだんに使いました。ガラスはライトの有機的建築という哲学にぴったりと理想的だったのです。
ライトの考えでは、ガラスは光を実体化し、視線を媒介する、重みを持たないものであった。彼はそれを建築において最も逆説的な素材、自然との関係では最も複雑なもの、と考えていた。…ガラスはまた絵画では過剰になりかねないところに、適度の優雅さを添えて、景観を構成するレンズのような働きをした。
出典元:ドナルド・ホフマン「Frank Loyd Wright:Architecture and Nature」1986年
今もなお、ライトの哲学やデザインは人々を魅了し続けています。